法律コラム
賃貸借トラブル
設例
私はアパートを所有していて、一室をBさんに貸しています。ところが、Bさんは賃料を半年間滞納しています。賃料を請求したところ、入れている敷金と相殺してくれと言って払ってくれません。敷金と相殺しなければならないのでしょうか。また、Bさんを追い出すことはできるのでしょうか。
1 敷金とは何ですか
敷金とは、賃料債務など賃借人が負う債務の担保のために、賃借人から賃貸人へ交付される金銭を言います。賃貸借契約が終了したときに、賃貸人は未払い賃料があれば、これを敷金から控除して、残額を賃借人に返還します。
敷金がカバーする範囲は、賃貸借契約に関して、賃借人が賃貸人に負う債務すべてです。しかも、賃貸借契約が終了した後でも、明渡までに債務を負った場合は、敷金でカバーできます。たとえば、契約終了後明渡までの賃料相当損害金や、明渡の引越し時に壁を傷つけた場合の修理費用なども含みます。
2 権利金とは違いますか
違います。権利金はテナント物件などの賃貸借で設定されることが多いものですが、権利金は「場所的利益、営業上の利益」の対価です。通常、契約終了時に返還されないものです。
3 敷金返還請求権はいつ発生するのですか
敷金は契約の終了時ではなく、明渡時に返還しなければなりません。したがって、貸主としては、明渡まで支払う必要がありません。そして、貸主は、契約終了後から明渡までの間に、借主に対する請求がある場合は、敷金から差し引いてしまって構いません。
4 敷金と滞納賃料は相殺できますか
貸主から相殺するか、借主から相殺するかを分けて考えてください。明渡時に、貸主が敷金を返還する際に、滞納賃料を一方的に差し引いて相殺して、残額を返還することができます。
他方、借主から敷金を入れているので、滞納賃料に当ててくださいなど、相殺の主張をすることはできません。裁判などをしても認められない主張です。
5 賃料を滞納している人を追い出すにはどうすればいいのですか
賃料を滞納している場合は、借主は義務の履行を怠っていることになります。これを「債務不履行」といいます。債務とは法律上の義務のことを言います。
債務不履行になった場合には、賃貸借契約を解除することができます。解除は口頭でもできますが、通常は内容証明郵便という特殊な郵便を利用しますし、弁護士の立場からも利用することを強くおすすめします。
賃料滞納があっても、賃貸借契約を解除しない限り、追い出すことはできませんし、借主が住み続ける権利はあります。
また、何か月分が滞納されたら、解除できるかの目安は3ヶ月くらいだと思います。
任意に明け渡さない場合は、滞納賃料の請求と明渡しの請求を、裁判所に訴えます。
6 勝手に鍵を取り替えたり、住人の留守中に荷物を出しても良いですか
できません。場合によっては重大な問題になります。
法治国家では「自力救済」が禁止されています。つまり強制力は国家のみが使うことができ、個人は強制力を行使することはできません。かならず裁判所を通じてしなければなりません。
7 他にどういう賃貸借トラブルがありますか
最近の裁判例では更新料の支払義務についてが重要です。
その他にも様々な賃貸借トラブルがあります。