賃貸借契約条項の中に「一回でも家賃を滞納すれば家主は契約を解除することができる」と予め入れておいたとしても、一回の家賃滞納では解除できません。
それはどうしてかといえば、賃貸借契約は、売買契約などとは異なり、一度限りの契約ではありません。個人的な信頼関係に基づいて長期間する契約です。契約を解除するには、契約の根底にある「信頼関係がなくなった」、つまり「信頼関係が破壊された」という場合でなければ契約を解除することはできません。このルールを「信頼関係破壊の法理」といいます。ものものしい言葉ですが、れっきとした法律用語です。賃貸借契約を解除するには、この「信頼関係破壊の法理」にそって、賃貸人と信頼関係が破壊されていなければなりません。ところが、一回の家賃滞納では信頼関係が破壊されていると認められません。こういうわけで一回だけの家賃滞納では解除ができないのです。契約条項の中に「一回でも家賃を滞納すれば家主は契約を解除することができる」とあったとしても「信頼関係破壊の法理」が契約書の記載よりも優先されて適用されますので結論はかわりません。
それでは何回くらいの滞納があれば、信頼関係が破壊されたと言えるのでしょうか。ケースバイケースですが、借家の場合(借地の場合ではありません)は、信頼関係が破壊されている可能性があります。