裁判で賃貸借契約を解除することができる「正当な事由」が争われた場合には、様々な事情を総合的に考えて判断します。何か一つの事情があればそれで「正当な事由」が決まるとは限らないのです。様々な事情とは何か項目を列挙します。

①大家さんと借家人の建物の使用の必要性の比較
②家族の数
③賃借人の資力(財力)
④大家さんと借家人の職業
⑤建物の現況・老朽化・補修の程度
⑥借家人の引越し先など

つまり貸主と借主の双方について、建物に対する利害得失を比較して検討します。もっともこれらについて検討したとしても、実際には決め手に欠けることが多いです。そこでこれらを補強して「正当な事由」とするための鍵になるのが「立ち退き料」です。「立ち退き料」はお金ですから、金額的に調整ができます。①から⑥までがほとんどない場合は「立ち退き料」を高めに設定すれば「正当な事由」になりえます。反対に①~⑥から判断して、微妙に正当な事由に足りない場合には、「立ち退き料」を低めに設定して調整します。